気象庁の緊急地震速報(警報)の誤発表

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行政、国内
目次
  1. 経緯
  2. 時系列
  3. 影響範囲
    1. 予測した震度の範囲
    2. 携帯電話会社の配信
    3. 自治体と交通機関
  4. 対応と現状
    1. 会見での説明
  5. 未公表の事項
  6. 注
  7. 出典
  8. 更新記録

気象庁の2026年10月16日の第1報によると、北海道から中部地方への緊急地震速報(警報)は、カムチャツカ半島付近の地震の震源を千島列島に決定し、マグニチュードを9.9と過大に推定したことによるものだった⁠[1]。同じ日の第3報では、2020年の事例の改善策だった、遠方の観測点を除く機能が正常に動作していなかった⁠[3]。長官は10月21日の会見で、設定がいつ変わったかをプログラムの中を見て調べていると述べた⁠[7]。

経緯

気象庁の緊急地震速報(予報)の発表状況のページによると、地震波の検知は12時38分10.1秒で、予報の第1報はその17.6秒後に出た⁠[5]。第1報のマグニチュードは6.2で、第2報から第14報までは6.5〜7.6だった⁠[5]。第15報で9.9になり、最後の第42報まで同じ値が続いた⁠[5]。

第2報では、広域に警報を出した理由の1つは、「日本から震源が非常に遠いところの地震」に国内用のマグニチュードを求める式を適用したことだった⁠[2]。もう1つは、本来は同一である必要があるマグニチュードの計算と震度の予測に用いた震源が、今回の地震では異なったことだった⁠[2]。第2報の図では、マグニチュードを計算した震源と、そのマグニチュードで震度を予測した震源が別の位置にあり、事後に地震情報で発表した震源はさらに別の位置にある⁠[2]。

時事通信は、地震火山技術・調査課長の説明として、まずカムチャツカ半島から東へ離れた地点を震源と想定して国内用の計算式でマグニチュードを推定し、次に震源の位置を千島列島北部に変えて国内各地の震度を予測したと報じた⁠[31]。

第3報では、震源から遠い観測点をマグニチュードの計算に用いて地震の規模を過大に推定したことが、過大な緊急地震速報を発表した原因のひとつとなった⁠[3]。気象庁は、2020年7月30日の鳥島近海を震源とする地震の事例の改善策として、マグニチュードの計算には震源から700km以上遠い観測点を用いないことにしていた⁠[3]。

気象庁の2020年7月30日の発表によると、9時38分に関東・伊豆諸島・東海・東北・甲信・北陸地方に出した警報では、本来の震源とは異なる房総半島南方沖に震源を決定し、マグニチュードを7.3と過大に推定した⁠[8]。8月7日の発表では、この地震は鳥島近海を震源とするマグニチュード5.8(地震情報で発表した値)で、震度1以上は観測されなかった⁠[9]。過大な推定は、800km以上離れた小笠原諸島の母島観測点のデータを用いたためだった⁠[9]。改善策による緊急地震速報の発表は、2020年9月7日11時に始まることになった⁠[10]。

ITmedia Mobileは、警報に対する取り消し報は2007年の運用開始以来初めてで、モニター観測で実際の揺れが軽微(最大震度2以下)と確認されたため、気象庁が手動で取り消し報を出したと報じた⁠[27]。気象庁は緊急地震速報の説明のページで、取り消すのは落雷等の地震以外の現象を地震と誤認して発信した緊急地震速報(誤報)のみとしている⁠[34]。

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時系列

時系列
日付主体内容資料
2026年10月16日12時38分ごろ-カムチャツカ半島付近を震源とするマグニチュード6.9(速報値)の地震が起きた〔注1〕⁠[1]
2026年10月16日12時40分気象庁予報の第17報で緊急地震速報(警報)を発表し、第19報で続報を出した⁠[4]
2026年10月16日12時40分ごろNTTドコモ緊急地震速報で緊急速報「エリアメール」が配信されない事象が起きた⁠[11]
2026年10月16日12時48分気象庁取り消し報(キャンセル報)を発表した⁠[5、7]
2026年10月16日12時52分気象庁震源・震度情報を発表し、緊急地震速報を発表したが強い揺れは観測されなかったと付記した⁠[6]
2026年10月16日14時気象庁第1報を発表し、過大となった原因は調査中とした⁠[1]
2026年10月16日17時30分気象庁第2報を発表した⁠[2]
2026年10月16日21時30分ごろ気象庁遠い観測点をマグニチュードの計算に用いない機能が動作するよう、緊急的な対策を実施した⁠[3]
2026年10月16日22時40分気象庁第3報を発表した⁠[3]
2026年10月17日NTTドコモ12時30分時点の第二報で、発生要因と対応完了の見込みを更新した⁠[12]
2026年10月17日19時4分NTTドコモ今回受信した形式のデータでもエリアメールを配信できるよう、対応を完了した⁠[13]

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影響範囲

予測した震度の範囲

気象庁の警報発表状況のページ〔注2〕では、第17報の予測は、根室地方北部が「震度5弱から7程度」、根室地方中部・根室地方南部・網走地方・北見地方・釧路地方北部などが「震度4から7程度」だった⁠[4]。第19報では「震度5弱から7程度」の地域が根室地方北部と根室地方南部になり、青森県津軽南部・秋田県沿岸北部・宮城県中部・宮城県北部も「震度2から7程度」の予測に入った⁠[4]。第17報の長周期地震動階級4の予測地域には、東京都23区・神奈川県東部・愛知県西部なども含まれていた⁠[4]。

予報の発表状況のページでは、第17報で震度を予測した地域は東京都23区(震度1から4程度)や愛知県西部・静岡県西部(震度0程度)に及び、第19報の予測地域には福井県嶺北・嶺南と愛知県東部も含まれた⁠[5]。観測した震度は、第1報では函館市の震度1だった⁠[1]。

携帯電話会社の配信

NTTドコモは10月16日の第一報で、緊急速報「エリアメール」を、気象庁の「一般向け緊急地震速報」で最大震度5弱以上か長周期地震動階級3以上が予想されたときに配信すると説明した⁠[11]。配信先は、震度4以上か長周期地震動階級3以上が予想される地域(全国を約200の地域に区分)の携帯電話で、今回の配信対象は北海道・東北・北陸・関東・甲信・東海・伊豆諸島だった⁠[11]。発生要因は「当社システム不具合」で、原因は特定していたが、解消まではエリアメールが配信されない場合があった⁠[11]。ケータイWatchは、ドコモがサイバー攻撃ではないと説明したと報じた⁠[28]。

10月17日の第二報では、気象庁から配信された緊急地震速報について従来と一部、形式が異なるデータを受信し、ドコモ側のシステムで正しい情報と認識できなかったことが、配信されなかった理由だった⁠[12]。ドコモは、従来どおりの形式のデータで受信すれば正常に配信されることを確認した⁠[12]。ケータイWatchは、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルでは10月16日昼の緊急地震速報が正しく配信されていたと報じた⁠[29]。

自治体と交通機関

表1:緊急地震速報の放送と取り消しを告知した自治体
組織放送の手段告知の内容資料
鶴岡市防災行政無線(自動連動)緊急放送が行われたが、防災行政無線の不具合ではないとした⁠[14]
下野市屋外拡声器放送した文面と、気象庁が取り消すと発表したことを掲載した⁠[15]
羽生市防災行政無線緊急地震速報が放送されたが、気象庁が取り消したと告知した⁠[16]
羽島市-気象庁が千島列島付近の地震として出した速報を取り消したと告知した⁠[17]
小樽市-気象庁の第1報の文面と資料を掲載した⁠[18]
下諏訪町-気象庁により速報が取り消されたと告知した⁠[19]
内灘町-先程の速報が取り消されたと告知した⁠[20]

富士市・八雲町・阿見町も、緊急地震速報の取り消しを知らせるページを掲載した⁠[21、22、23]。

国土交通大臣は10月20日の会見で、新幹線をはじめとする公共交通機関なども影響を受けたと述べた⁠[24]。時事通信は、JR北海道管内の一部在来線が一時運転を見合わせ、その後再開したと報じた⁠[31]。

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対応と現状

第3報では、気象庁は緊急的な対策により、今回の地震に対しては緊急地震速報(警報)が発表されなくなることを確認した⁠[3]。

時事通信は、気象庁が10月17日までに当面の再発防止策を講じ、震源までの距離が700キロ超の地震では緊急地震速報を発表しないよう再設定したと報じた⁠[32]。

ITmedia Mobileによると、取り消し報が出たときにも多くの人のスマートフォンで警報音が鳴った⁠[27]。キャンセル報で警報音を鳴らさない改善について、気象庁は「現時点ではそのような検討は行われていない」とし、約20年前の制度導入初期の仕様に基づいて動作しているため、必要に応じて検討は行うべきだと考えるが、実施するか否かは言及できないと回答した⁠[27]。

会見での説明

ITmedia Mobileは、気象庁が10月16日14時から開いた最初の記者会見で、原因は「ハードウェアの障害ではなくシステム処理(プログラムなど)に起因する」との見解を示したと報じた⁠[27]。

ITmedia NEWSによると、緊急地震速報は正常に発表できる状態だった⁠[26]。気象庁は会見でサイバー攻撃の可能性を「ない」と否定し、システム担当者からその旨の報告を受けたと説明した⁠[26]。予報を取り消した例は過去にもあり、直近は2026年3月7日だった⁠[26]。

ANNは10月16日、気象庁が震源を2回誤ってマグニチュードなどを算出していたことが原因だと説明したと報じた⁠[33]。気象庁は同じ日の22時40分から3回目の会見を開いた⁠[33]。

国土交通省の10月20日の大臣会見要旨では、大臣は、気象庁が記者会見を3回開いて随時説明したことに触れた⁠[24]。今回の誤報はサイバー攻撃とは異なる要因と判断しており、発表の前後にも不正なアクセスは確認されていないと答えた⁠[24]。「萎縮せず出すべき速報はしっかり出す」よう、気象庁に指示している⁠[24]。

気象庁の10月21日の長官会見要旨によると、長官は原因として、地震の規模の計算や震度を予測する手法の一部の不備と、過去の事例を受けて講じた対策が正常に機能しなかったことを挙げた⁠[7]。急ぎ原因の究明を指示し、速報を出した日のうちに2つの原因が分かったと述べた⁠[7]。遠くの観測点のデータを使わない設定は今回「なぜか抜けてしまい」、大きな誤差が生じた⁠[7]。2つのうち一方は設定のオンオフの誤りで、もう一点はプログラムの中身の問題でもあるとした⁠[7]。

長官は、人の判断を介さず自動で情報を発信する性質上、誤報を完全に無くすことは実質上困難だと述べた⁠[7]。ここ数年では情報が出てから9割以上で強い揺れが発生しているとも述べた⁠[7]。過去に講じた対策がもう一度抜けたことを「非常に遺憾」とし、プログラム抜けや運用の抜けを防ぐ方法を今後検討するとした⁠[7]。総理・官房長官等からは、原因究明と再発防止を「しっかり行うように」との指示があった⁠[7]。

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未公表の事項

  • 遠方の観測点を除く機能が正常に動作しなくなった時期(長官は10月21日の会見で、推測では一番可能性が高いのは更新時ではないかとも考えられると述べた⁠[7])
  • 恒久的な再発防止策の内容と、調査の結果を公表する時期
  • ドコモが受信したデータの形式の具体的な違い(ケータイWatchによると、ドコモは「セキュリティ上の観点もあり、詳細は控える」と回答した⁠[30])
  • エリアメールが配信されなかったドコモの回線の数
  • 運転を見合わせた公共交通機関の路線の数と本数

注

  • 〔注1〕長官は発生を12時35分と述べた⁠[7]。震源・震度情報のデータでも、発生時刻(OriginTime)は12時35分だった⁠[6]。米国地質調査所(USGS)の記録は協定世界時3時35分31秒だった⁠[25]。
  • 〔注2〕このページの表は、警報の発表基準を満たした地域名だけを記載している⁠[4]。

出典

当事者

関係組織

公的機関

調査・観測

報道機関

背景資料

更新記録

  • 2026年10月26日13時16分:公開した。
  • 2026年10月26日13時57分:「会見での説明」で、震源を2回誤っていたとの気象庁の説明に付けていた「この3回目の会見で」の場を、ANNの記事の記述どおり削り、3回目の会見の時刻を別の文にした。

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